少しずつではなく、偶然にではなく。

最も幸せなのは、心の赴くままに文章を書いているときだ。
頭を唸らせずに文章を書ける状態にあるときは、人生に肉薄している気になれる。
私の人生のテーマは人生を自分のものにすることで、そして人生に肉薄する機会は文章を書くことでしか得られない。

私はガチャガチャした人間で、机も部屋もきたないし、歯を磨きながら本を読むし、テレビを見ながらランニングをするし、のべつくまなく喋っていて、ときとところに振り回されて、感情はぶらんぶらんと振れまわる人間だ。

文章をすっと書けるのは、ガチャガチャした頭とぶらんぶらんとした心がフッとかち合って、うまく対話ができているときだけだ。
週に一度もやって来ないし、やって来てすぐに書かなければ、心臓が動いている間は必ず相手をしなければならない別の人生の何かに邪魔されて、消え失せる。


最近でこそ滅多にないラッキーハプニングになりつつあるが、数年前はもっと頻繁に訪れていたと思う。
でもそのときは、それが人生を手篭めにする大事な機会だとは思わずに適当に浪費をしていたのだから、他の人生の真理と同じように、今更言っても仕方ないことだ。


今年は、いままで少しずつ溜め込んできた人生の多くを、意味もわからずに、ことあるごとに手放してしまったから、人生を自分のものにする作業を来年は一から始めなければならない。

もう少し丁寧に言うと、いままでは自然に生きていればある程度人生に近づくことができていた。
でもそれは人生が向こうから近づいてくれていたからで、人生がそっぽを向きつつある時期と、このままでは本当の意味で人生を自分のものにすることができないことに気づかされた時期が重なったということなのだと思う。偶然ではなく、当然のこととして、有難いことに。

気づかされたときは、徹夜で書き上げた準備書面がpcのクラッシュのせいで消えてしまったときのように、何もしたくなくなる時間が短くなかったけれども、いままで近くにいた人生の香りを思い出しながら、少しずつ、今度は主体的に、書き始めようと思う。


まずは掃除とランニングかな。


ではまた。
良いお年をお迎えください。