朝鮮学校を「高校無償化」制度の対象からはずすことに対して反対する理屈
以下、題名記載の理屈をわかりやすく記載した文案を転載します。
拉致をした北朝鮮という国家を憎む気持ちと、北朝鮮籍の人間を憎む気持ちを同一視するということは、人間を属性で切り取って、属性の評価で人間を評価することであって、差別の基礎となる思考です。
もちろん、北朝鮮を許せない気持ちを持つことや、そのために北朝鮮籍の人間を憎む気持ちを持ってしまうことも、感情的に理解できます。
ですが、少なくとも、権力を一手に握る国家や、大新聞と言われるものは、そのような感情を乗り越える理性を持つべきです。
中国の日本人料理屋が、略奪にあった事件をニュースで見て、悲しくなりませんでしたか。日本中が中国政府の黙殺をこぞって非難しました。それでもこれは、国家に直接的になされたものではありませんでした。今回の政策は、国家による露骨な差別です。
自分の子供が慶応のニューヨーク校で勉強しているときに、アメリカの日本人学校だけ極端に助成を受けられなかったら、悲しくなりませんか。
それをアメリカ政府が政策として打ち出していたら、とても悲しくなりませんか。
そのときに、自分たちの政府が昔拉致をしていたのだからやむをえないといえますか。
中国や韓国は、60年前に日本が侵略したことを理由に、ときに日本人を排撃します。日本は、それと同じか、それよりもひどいことをしようとしています。
教育やスポーツに政治を持ち込むのは、悲しいことです。
<NGOと市民の共同要請>
私たちは朝鮮学校を
「高校無償化」制度の対象とすることを求めます私たちは、多民族・多文化社会の中ですべての子どもたちに学ぶ権利の保障を求めて活
動するNGOであり市民です。
新政権のかかげる「高校無償化」制度においては、政権発足当初より各種学校である外
国人学校についてもその範囲に含むことが念頭におかれ、昨秋、文部科学省が財務省に提
出した概算要求でも朝鮮学校などの外国人学校を含めて試算されていました。
ところが今年2月、法案の国会審議を目前にしたこの時期、新聞各紙では「中井拉致問
題担当相が、4月から実施予定の高校無償化に関し、在日朝鮮人の子女が学ぶ朝鮮学校を
対象から外すよう川端達夫文部科学相に要請、川端氏ら文科省の政務三役が検討に入った」
(2月21日)、「鳩山首相は25日、高校無償化で、中井洽拉致問題担当相が朝鮮学校を対
象から外すよう求めていることについて『ひとつの案だ。そういう方向性になりそうだと
聞いている』と述べ、除外する方向で最終調整していることを明らかにした」(2月26日)
と報道されています。 しかし、日本
人拉致問題という外交問題解決の手段として、この問題とはまったく無関係である日本に
生まれ育った在日三世・四世の子どもたちの学習権を「人質」にすることは、まったく不
合理であり、日本政府による在日コリアンの子どもたちへの差別、いじめです。このよう
なことは、とうてい許されることではありません。朝鮮学校排除の理由として「教育内容を確認しがたい」との説明もなされていますが、
これは、『産経新聞』2月23日付けの社説「朝鮮学校無償化排除へ知恵を絞れ」にも見ら
れるように、朝鮮学校排除のために追加された名目にすぎません。
朝鮮学校は地方自治体からの各種学校認可や助成金手続きの際、すでにカリキュラムを
提出していることからも、「確認しがたい」との説明はまったく事実に反します。また、
日本 のほぼすべての大学が朝鮮高級学
校卒業生の受験資格を認めており、実際に多くの生徒が国公立・私立大学に現役で進学し
ている事実からも、朝鮮 高級学校が、学校教育法第1条が定める日本の高等学校(以下
「1
条校」という)と比べても遜色ない教育課程を有していることを証明しています。そもそも、1998年2月と2008年3月の日本弁護士連合会の勧告書が指摘しているとおり、
民族的マイノリティがその居住国で自らの文化を継承し言語を同じマイノリティの人びと
とともに使用する権利は、日本が批准している自由権規約(第27条)や子どもの権利条約
(第30条)において保障されています。また、人種差別撤廃条約などの国際条約はもとよ
り、日本国憲法第26条1項(教育を受ける権利)および第14条1項(平等権)の各規定か
ら、朝鮮学校に通う子どもたちに学習権(普通教育を受ける権利、マイノリティが自らの
言語と文化を学ぶ権利)が保障されており、朝鮮学校に対して、日本の私立学校あるいは
他の外国人学校と比べて差別的な取扱いを行なうことは、そこに学ぶ子どもたちの学習権
・平等権の侵害であると言わざるを得ません。
「高校無償化」制度の趣旨は、家庭の状況にかかわらず、すべての高校生が安心して勉
学に打ち込める社会を築くこと、そのために家庭の教育費負担を軽減し、子どもの教育の
機会均等を確保するところにあるはずです。朝鮮学校は、戦後直後に、日本の植民地支配下で民族の言葉を奪われた在日コリアンが
子どもたちにその言葉を伝えるべく、極貧の生活の中から自力で立ち上げたものです。い
ま朝鮮学校に通う子どもたちには朝鮮籍のみならず、韓国籍、日本国籍の子どもたちも含
まれており、日本の学校では保障できていない、民族の言葉と文化を学ぶ機会を提供して
います。
このような朝鮮学校に対して、1条校と区別するだけではなく、他の外国人学校とも区
別して、「高校無償化」制度の対象から除外する取り扱いは、マイノリティとして民族の
言葉・文化を学ぼうとする子どもたちから中等教育の場を奪うものであり、在日コリアン
に対する民族差別に他なりません。
去る2月24日、ジュネーブで行なわれた国連の人種差別撤廃委員会の日本政府報告書審
査では、委員たちから「朝鮮学校は、税制上の扱い、資金供与、その他、不利な状況にお
かれている」「すべての民族の子どもに教育を保障すべきであり、高校無償化問題で朝鮮
学校をはずすなど差別的措置がなされないことを望む」「朝鮮学校だけ対象からはずすこ
とは人権侵害」などの指摘が相次ぎ、朝鮮学校排除が国際社会の基準からすれば人権侵害
であることはすでに明らかになっています。外国籍の子も含めてすべての子どもたちに学習権を保障することは、民主党がめざす教
育政策の基本であるはずです。私たちは、朝鮮学校に通う生徒を含めたすべての子どもた
ちの学習権を等しく保障するよう強く求めます。2010年3月10日
<呼びかけ>外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク(代表:田中
宏)
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2−3−18−52 在日韓国人問題研究所
電話03-3203-7575(佐藤)
〒160-0023 東京都新宿区西新宿7−5−3 斎藤ビル4階 みどり共同法律事務所
電話03-5925-2831(張)
〒657-0064 神戸市灘区山田町3−1−1 神戸学生青年センター
電話078-851-2760(飛田)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・共同要請への賛同のお願い
◇私たちはこの間、外国籍の子どもたちの学習権を保障するためのさまざまな取り組みを
行なってきました。そして昨年9月誕生した新政権に対しても、朝鮮学校や韓国学校、中
華学校、ブラジル学校、ペルー学校など200校以上になるすべての外国人学校の処遇改善を
求めてきました。
◇新政権が「高校無償化」制度を提起し、その中に外国人学校を対象としたことは、画期
的なことです。しかし、朝鮮学校だけこの制度から除外しようとすることは、憲法および
国際人権諸条約に違反するものであり、朝鮮学校に通う子どもたちの心を踏みにじるもの
です。
◇この共同要請書に、多くのNGO・市民団体・労組・諸団体および個人に名前を連らね
てもらい、3月11日、政府に提出すると共に、海外の人権団体などに送付します。
○要請書に賛同される団体・個人は、3月10日正午までに、団体名か個人名を、英語表記
を併記して、下記のEメールアドレスまでお知らせください。
school@econ-web.net(外国人学校ネット)
○また、賛同された団体は、各団体のウェブやMLで、この共同要請を広く発信していっ
てください。
ではまた。