アメリカと検察

イラク開戦前に、ブッシュが述べた理由は以下のものだったそうです。

1 生物・化学兵器等、大量破壊兵器保有し続け、その事実を否定し、国連の武器査察団に全面的な協力を行わない(部分的な協力に止まっている)ことに対する武力制裁のため。
イラクの一般市民をサッダーム・フセイン大統領の圧政から解放するため。
3 テロリストに対する支援国であるイラクを「民主的な国」に変えるため(対テロ戦争の一環)
wikipedia:イラク戦争


ご存知のとおり、1の理由はアメリカや国連の調査団が生物・化学兵器も、大量破壊兵器もなかったことを認めています(これもウィキ参照)。
2の理由は、なんというか、もの凄く恩着せがましい理由ですよね・・。
3の理由は、いまだにアルカイダは出てきません。



さて、今回、小沢問題の違法の理由を、明確に説明できる人はいますか?
(ちなみにこれはホリエモンのときもそうでした。ホリエモンは結局なぜ有罪なのかわかりますか?)


検察は、1年前、小沢が西松から違法に献金をもらっていたといっていて、秘書を逮捕してひたすら取調べをやって、捜索差押をバンバンやっても確実な資料が出てこないまま訴訟に突入し、結局冒頭陳述を聞いても全然何が悪いのかわからなくて、ずっと「天の声」によって談合を取り仕切った雰囲気だったみたいなことを言っていて、そしたらじわじわと話を変えて、今回突然4億円の虚偽記載だと言い出しました。


大量破壊兵器があると言って、安保理決議に基づいて侵略を始める頃から、じわじわと民主主義を確立するだの、アルカイダの壊滅だの理由を変えて、結局どれもうやむやになって終わったイラク戦争と似ていますね。


理由がころころ変わるのは、つまりは隠れた理由があるからです。憲法違憲審査基準の手法としての目的手段審査と同じです。手段を審査すると目的との関連性が弱いために、隠れた目的が暴かれるのです。


今回の虚偽記載の疑惑も、何の疑惑だか全くわからなくて、説明聞いてもよくわからん。というか検察自身が明確に説明せずに、検察のリークに基づくマスコミが微妙に異なった理解に基づいて報道するから、ツボがよくわからん。




しかし、イラク戦争と違うところが3つあります。


イラク戦争は、

1.明確に開戦前に理由を述べていて、
2.戦後にアメリカ自身が開戦前の理由との関係でしっかりと検証を行った

ために、後に理由が誤りだったことがわかりました。
そして、

3.責任の所在が明確であったために政権が交代しました。



検察は、

1.明確に捜査前に理由は述べません。そりゃ捜査段階では公開できないでしょうが、全ての判決が確定したときに捜査の端緒をある程度公開することを義務付けるべきでしょう。

2.検察は検証を行いません。それどころか、本当は第三者として検証を行うべき裁判所がノーチェックで通すので、むしろ検察がお墨付きを与えられる。しかも、責任も感じない。裁判所が認めたんだから、と。でも、裁判所は、本当に何も考えていない。単に検察の言うことをなぞるだけだ。裁判所があるせいで、むしろマイナスだ。検察が逮捕して、検察が起訴して、検察が有罪判決を下すのであれば、もっと検察に対する批判は強まるし、監視の要請も高まるのに、裁判所が絡んでしまうせいで、検察の問題点が見えにくくなってしまう。チェック機構は果たさずに、お墨付きを与える。有害です。つまり政権交代(権力の交代)すら起きない。


3.検察は独任庁組織という、「ぬえ」のような組織です。
一人一人が検察官として行政機関としての権限と役割を与えられますが、厳然として組織は存在しています。全ての活動には、上官の決裁を必要とする上命下服の組織ですが、個別の活動主体は、一人一人の検察官です。
この「ぬえ」性のため、検察の行動は、誰も責任を取りません。菅谷さんの冤罪問題のときに、検察は、宇都宮地検の検事正が面前で、最高検の次席検事が談話で謝罪を述べましたが、担当検事や当時の決裁官が謝罪をしたわけではありません(ちなみに裁判所はいまだに謝罪をしていません)。

ですから、特段検証することも、反省することもなく、ひたすら次の冤罪へ突き進みます。ちなみに私は検察官個人個人の活動には敬意を抱いていますし、個人的に好意を感じる検察官もいます。しかし組織としての検察は、本当にひどい組織だと思っています。



つまり、あの、ひたすら世界からバッシングを受けたアメリカよりも、検察の現状は問題なのです。やばいです。最近「落日燃ゆ」を読んでますが、構造が戦前の軍部に似ていますね。ノーチェック。統帥権






ではまた。