権利と義務とテレビ局

番組ネット転送「違法」 最高裁

2011年1月19日 朝刊

 テレビ番組をインターネット経由で送信し、海外などで見られるようにするサービスは著作権法違反だとして、NHKと在京民放五社が、東京都内の運営会社「永野商店」に送信の差し止めや損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長)は十八日、テレビ局の権利を侵害していると認定。テレビ局側敗訴とした二審・知財高裁判決を破棄し、損害額などをさらに審理させるため同高裁に差し戻した。 

 問題のサービスは、ソニー製の映像伝送機器「ロケーションフリー」(販売終了)を使った「まねきTV」で、二〇〇七年時点で七十四人が利用していた。利用者はそれぞれに機器を購入して永野商店に預ける。機器にはアンテナで受信した番組が入力され、利用者はパソコンなどを使ってインターネット経由で機器から見たい番組を受信する。

 テレビ局は、不特定多数に番組を送信する公衆送信権と、視聴者の求めに応じて番組を受信させる送信可能化権という著作権法上の権利を持っている。訴訟では、サービスが二つの権利を侵害するかが争われた。

 同小法廷は「機器に情報を入力する者が送信主体となる」と判断。まねきTVの仕組みでは、アンテナで受信した番組を各機器に入力している永野商店が送信主体で、利用者は不特定多数の公衆にあたり、公衆送信権送信可能化権を侵害しているとした。

 永野商店側は「番組を転送する場所を貸しているだけで、著作権を侵害していない」と主張。一審東京地裁は、機器からの送信主体は各利用者と判断。二審も「一対一の送信にすぎず、公衆への送信にはあたらない」としていた。

 永野商店側弁護団の話 国民の著作物の利用を制限する極めて不当な判決だ。

 NHKと民放五社の話 適切な判断が下された。著作権などの権利の適正な保護に努めたい。

著作権の法的な議論はあまり興味が無い。
気になるのは以下の点。


1つは、特権免許事業者のテレビ局に、しかも強制的に受信料まで取るNHKに、普通の私人と同じような意味で著作権を認める必要があるのかということ。皆様のNHKじゃないの?NHKの著作物は皆様に還元するべきじゃないの?もちろん半分は言いがかりなんだけど、どうもテレビ局が著作権だの表現の自由だのを主張するのはおかしいと思う。一度テレビ局の法的性質について腰をすえて勉強する必要がありそうだ。仮説として、テレビ局とは、通常の法人とも、新聞メディアとも、行政機関とも異なる特殊な法人であって、大げさに言えば特別法で管理すべき存在だと思う。放送法による業法管理ではなくて。
独立法人にすべきだとか、公務員とするべきだとなんていうつもりは毛頭なくて、一般の私的法人と同様に民間業者に任せて民間の論理に原則として委ねたらいいんだけど、著作権とか表現の自由とか、税金とかに関して言えば、例えば宗教法人と同じように、何らかの特別の仕組みが必要だと思う。
テレビ局って法的にとても特殊な存在だよね。


もう1つ。
客が是非とも欲しいと言っているんだから、テレビ局が売ればいいんじゃないの?技術的に可能で採算が取れることは、まねきTVが明らかにしてくれたんだから、金と時間をかけて長々と訴訟なんてしてないで、同じビジネスモデルを展開するか、まねきTVを子会社にしたら?
個人的には、著作権を持ちながら、そして採算が取れるにもかかわらず、販売しないって権利を保持する資格が無いと思う。著作権が認められた趣旨に鑑みても、義務が伴う権利と考えてもいいのでは?
昔のバブルのワンマン経営者(俗物)が、メアカが付くと称して名画を公開しなかったことにも通ずる。著作権とか所有権があるからと言ってなんでもしていいわけじゃないんだよ。
特に公益的な要素が強いテレビ局は。
例えば今日の日本・カタール戦とか、100円払ったら生中継をネットで見れるとかしてほしい。
あ、よく考えたら、まねきTVがだめで、スポーツバーがいい理由ってなんだろ。


もう1つは、無料で配信しながら著作権云々言うのは違和感が強い。
歌や、漫画が、著作権にうるさくなるのは分かる。金とって販売してるデータが無料で/安価に転送されたら、商売上がったりだからね。
でも、テレビ局は、基本的に無料で配信してるわけで、それをビデオにとるところまでは許されているわけでしょ。無料で/安価で転送されたらどのような不利益があるんだろう。
もちろんテレビを見ずにビデオで見てしまうから、広告料が入らなくなる、というのはあるだろうけど、そんなん既に多くの人がビデオ録画で視聴している以上、保護するに値するとは思えない。
しかもまねきTVは、録画をせず直接配信していたんだから、むしろビデオ録画で視聴する人よりもテレビ局にとってはありがたいお客さんなんだと思うんだけどなぁ。


以上、全体として、商売としても、法分野としても、いまひとつ感覚がつかめない事件だけど、これをきっかけに少し勉強してみようと思う。

新年一つ目なので、そしてひと月もあいてしまったので、リハビリがてら感想文を。
遅くなりましたが今年も宜しくお願いします。
ではまた。